同時に、九三年に登場したフルクスワーゲンのピエヒ社長はじめ、ダイムラー・ベンツもルノーもB社もかつて日本でいわれた〝モーレツ″社長が、つぎつぎ登場してきた。
彼らは、例外なく危機感を背負ってきた。
EU共同通貨制の施行、世界的生産過剰の到来、未来技術の開発競争、二〇〇〇年の日本車自由化などなどであった。
実力派経営者が危機感をもったとき、日ごろに倍する火事場のバカカに似たエネルギーが出ている。
そこに点火されたのが、九八年五月に発されたダイムラーC社の大合併だった。
これも、二一世紀体制にたいする危機感が発火点となっている。
この巨大合併という超高層ビルは、周辺の風向きと風圧を完全に変えてしまった。
とくに足元のドイツでは、ライバル会社に予想以上の衝撃を与えた。
明日いるとみられた「車間」が、いっきょに今日きてしまった。
その根底にある危機意識は、各社が競って同じような商品の多角化路線を歩みはじめたこと、各社が競って世界の同じような途上国市場に転進しはじめたことであった。
商品的広がりと市場的広がりである。
これは、地球化戦略をすすめていくには、不可欠の自己防衛なのである。
こうしていまヨーロッパ主要各社の置かれたポジションを整理してみると、つぎのようになる。
ダイムラーC社と超高級車クラスにメイバッハが登場、これで、旧C社が協力、小型車をひっさげてラインに加われば、トヨタなみのフルラインとなる。
あとは伝統あるスポーツカー部門(たとえばポルシェなみ)の会社がほしいところだ。
フルクスワーゲン、スポーツカー部門としては、アウディ事業部がランボルギーニを取得、往年のレーシング・メーカー、ブガッティも買収した。
これで少量生産ながら、スポーツカー部門をそろえた。
常識的に考えればランボルギーニがあれば十分であり、ブガッティまで買収する必要はなかったと思われるが、これを今後どう戦略的に使うかは、むしろピエヒ社長の腕にかかっている。
ただ、ピエヒ社長は、もしポルシェになんらかの異変があれば、ただちに買収に乗り出し、スポーツカー部門を完壁にしたいところだろう。
超高級車部門に、ロールス・ロイスを買収したが、二〇〇三年からはロールス・ロイスのブランドは宿敵BMWLか使えずベンレのみのブランドとなる。
これは、痛恨事のようにみえるが、ピエヒ社長の好みは、ベンレのほうかもしれない。
〝通″は、ベントレーを好む。
また、そう育て上げるのが、ピエヒ社長の役目でもあろう。
ただ、再編台風の荒れ方いかんでは、ダイムラーとVWの挟撃を受けたBMWを、ロールス・ロイスごと買収する可能性も残されている。
さらに、ポルシェとバンを共同開発中。
タイプとしては、GMタイプの点接触型である。
BMWスポーツカー部門では、自社開発車もあるが、これはまだ歴史も浅い。
フルクスワーゲンと争うなら、今後イタリアの名門スポーツカー・メーカーをねらう必要がある。
超高級車部門では、ロールス・ロイスをVWと争った。
どたんばで、そのブランドを死守した。
もともとロールス・ロイスに動力部分を供給していたが、それでイギスに車体工場をついる計画である。
ただ、効率化を考えると、ドイツ工場も考えられるが、エンジンも車体もドイツ製となると、これでどこがイギリスの名門ロールス・ロイスかということにもなりかねない。
ここをどう切り抜けるかが、BMWの課題である。
イギリスのローバーを併呑したのは、小型車と四駆SUV部門の充実をねらってのことだったが、いまのところ、穴埋めの役は果たしている。
この会社は、攻めるにせよ、守るにせよ、まだまだ再編台風の目から抜け出ていない。
DCとフルクスワーゲンとのはさみ撃ちにあう可能性もあり、十分に警戒する必要がある。
ローバーは併呑したが、会社の体質はGMタイプの現地統括型とはいえ、世の激流にはさからえず、親戚筋のフルクスワーゲンとSUVを共同開発している。
二〇〇二年発売予定で、価格は二万ドルから二万五〇〇〇ドルか。
これによって売上げの五〇%増をねらっている。
中国に一汽車と合弁で技術開発会社をもつが、まだ本格稼動していない。
いずれフルクスワーゲンと共同戦線を張るか。
ヨーロッパ再編の目になる可能性があるが、そうなったばあい、フルクスワーゲン、DCはドイツのメンツにかけて死守すラーリを子会社化し、八〇年には同じく名門のアルファロメオ、マセラティを傘下におさめて世界の有名スポーツカー・メーカーを一堂に集めている。
基本的には、イタリア政府の方針で、いずれも併呑型の再編をすすめている。
それだけに親会社の守りは堅いが、万一、フィアットの経営が不振となれば、世界中の自動車会社から絶好の草刈り場になる(1 7参照)0ルノーかつてはへアメリカ自動車企業AMcの株式を保有したり、B社と合併問題を起こしたり、基本的には多角化路線を志向しているようだ。
ただ、それにしては商品ラインナップとグローバル性に欠けていた。
そのおり、九八年夏から資金難に悩む日産と接触、九九年三月、同社に資本・経営参加したことは、すでに述べた通りであ一方、バス・コーチ部門はフィアットの同部門イペコと九八年五月に対等合併した。
これは、量産化によってコスト・ダウンをはかり、バス部門で国際的競争力をつけるのがねらいである。
あたかも、B社が乗用車部門をフードに売却し、自社は世界的商用車メーカーをめざすのによく似ている。
そこまで、自動車業界の生存競争は俄烈をきわめているのだ。
最後に、日本の自動車産業は、どこに行のか。
前述したように、いま世界の再編の目はヨーロッパであり、ヨーロッパの再編の目はドイツである。
ここが一巡して、世界がなんらかの連携戦略に出た場合、ひとり日本だけが、単一企業体ですすんでいけるものかどうか。
日本企業は、世界の再編劇にはもっともなじまない部類にはいる。
かつて資本提携しながら、いまそれが活かされていないケースはかなりある。
イギリスの著名な自動車産業コンサルタン声がかからないのか。
それを教えてくれ」と、聞いたことがある。
これにたいして、「たしかに、企業風土のちがいや話すことばのちがいなど、理由はいろいろあるだろうが、それはだんだん克服されつつある。
現実にかつてのアメリカ・ビッグスリーは、日本企業とかなり深い資本関係をもっている。
残ったのはヨーロッパの企業だが、これは日本が避けているとか嫌っているとかではない。
その必要性を感じていないからではないか。
それを感じたとき、ヨーロッパ企業でも韓国企業でも、あるいは日本企業同士でも再編が問題になる」と答えた記憶がある。
再編劇には、「攻める再編」と「守る再編」がある。
日本国内では、「守る再編」はもうあらかた終わったとみていい。
残るは、体力を回復したあとの「攻める再編」である。
そのとき、おそらくヨーロッパの企業が、対象になる。
ヨーロッパは、まだとても勝負がついたとはいえないからだ。
弱肉強食時代がまだつづく。
各社がグローバル化を賭けて「皐闘」をつづけている真っ最中だからだ。
その敗者のなかに、今度は日本企業が「攻める再編」の手をとるべき相手があることは、十分に考えられる。
それは、日本の企業にしてみれば、またとない機会である。
日本国内には十社が生存していて、一見、過剰のようにみえる。
ただ、資本の点接触型としては四グループにまとまっており、残る二社(本田、三菱)に連携の必然性はない。
それが、外に向かっての再編エネルギー源となっているかもしれない。
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